思いもかけない事故や災害に接するたびに、平穏な日常は、私たちに当然に与えられたものではなく、意識して守らなければならないものだと、強く思います。一人ひとりが正しい知識を持つこと、備え続けることももちろん大切ですが、公的な支援体制の整備はますます重要になっています。


食物アレルギーを正しく理解し、子どもの命を守る

2012年12月20日、重い食物アレルギーを持つ調布市立小学校5年生の女子児童が、給食を食べた後体調を悪くして亡くなってしまうという事故が起こりました。行政解剖の結果、死因はアレルギーによるアナフィラキシーショックの疑いということでした。

11歳という若さで突然命を絶たれた女子児童の無念さ、ご両親の悲しみは計り知れません。子どもの命を守るのは、私たち大人の責任です。調布市教育委員会は、この事故を受け検証委員会を立ち上げて報告書をまとめ、それをもとにアレルギー事故の再発防止策「調布ルール」を定めました。

また、この痛ましい事故を風化させないために、調布市は、12月を調布市立小・中学校「いのちの心と教育」月間と位置づけました。子どもたちが、食物アレルギーを正しく理解して違いを認め合いながら、給食の時間を楽しめるよう、私たちの取り組みは続きます。

   


過去の災害を忘れず、未来の災害に備える

東日本大震災が発生した2011年3月11日の市議会は、定例議会中でした。調布市は震度5強を観測しました。次々に起きる余震の中、テレビに映し出される悲惨な映像から目を離すことができませんでした。大津波にさらわれそうな人々の姿に、画面に向かって夢中で「逃げろ!」と叫んだこと、爆発した原子炉建屋の映像が現実のことと思えず呆然としたことは、忘れることができません。

川畑英樹のふるさと熊本でも、2016年4月、熊本地震が発生しました。熊本地震の特徴は、活断層が動いて発生した直下型の地震であること、最大震度7の揺れに二度にわたって襲われたこと、余震が非常に多かったことです。30年以内に70%の確率で首都直下型地震が起きると言われるなか、直下型地震である熊本地震の教訓は、調布の防災を考える上で重要だと思います。

災害大国と言われる日本では、各地で、地震以外にも毎年さまざまな災害が発生しています。調布市でも、2019年10月、令和元年東日本台風により、多くの家屋が床上床下浸水の被害に見舞われました。市制施行後初めて発令された避難勧告によって、6,000人以上の方が避難所に避難する事態となりました。

災害は忘れたころにやってくるとよく言われます。大きな災害の直後に持っていた意識も、日々の生活の中で知らず知らずのうちに薄れてしまうものです。人は予期せぬ災害に遭遇したとき、「まさか」と思う気持ちが先に立ち、被害を小さく見積もりがちなのだそうです。これは「正常化バイアス」と呼ばれるもので、東日本大震災や御嶽山の噴火で犠牲となった方にも、この正常化バイアスが働いていたものと言われています。

事態を冷静に判断し、的確な行動をとるためには、日ごろの備えが欠かせません。過去の災害を忘れずに、これからやってくる災害に対し、可能な限り備えておかなければなりません。